
お金が減っても結果的に得をする? 金融会社の社長が考える「投資」の本質
「僕はねぇ、昔コンビニで“たむろ”していた若者に『投資やろうよ』と声をかけていたことがあるんです」
そう話すのは外貨ex byGMOの代表を務める松本好史さん。
若者にしてみればワケのわからない話です。欲しいものもたくさんあるし、旅行にも行きたい。それに、損をしたくないというのが本音。正直、「投資」をしている余裕なんてないです。
なのに、なぜ彼はそんなにも若者に「投資」を勧めるのか。大和証券、マネックス、ヤフーと、金融業界を渡り歩いてきたこれまでのことを踏まえて、「投資をする理由」を聞いてみました。
これを読めば、若者が投資をするべき理由がちょっとわかるかも…!?
・・・
料理人になるはずが、高卒で証券会社へ…!?

ーー松本さんはこれまでずっと金融業界に身を置かれていますよね。もともと金融に興味があったんですか?
松本:
いや、全然(笑)。僕はもともと料理人を目指していたのですが、あるとき気が変わりまして。先生に勧められて高卒で大和証券に入りました。
別に金融の勉強をしていたわけでもないし、投資に興味があるわけでもない。社名も知らないまま受けたら内定をもらえてラッキー! みたいな。

松本:
でも、入ってみると面白い世界が広がっていたんです。当時はバブル真っ只中。証券会社の営業はいわば花形だったけど、独特で、上下白のスーツにパンチパーマでブイブイいわせている人もいて、すごく活気がありました。
ランチを食べるためだけに、タクシーで銀座の資生堂パーラーに行ったりして!
ーーバ、バブリーですね…。
松本:
僕は新卒だったので、奢ってもらいに付いていっていただけだけど(笑)
業務部、経理部、経営企画部…と何でもやらされていたので、いろんな部署の人に可愛がってもらいましたね。金融業界は人との繋がりが多くて、それも自分の財産になりました。
それから、人との繋がりを通じて、2000年にネット証券会社・マネックスに転職しました。当時のマネックスのビジョンは、「誰でも簡単に投資ができる世界をつくること」なんだけど…公園にある水道の蛇口にたとえるとわかりやすいかな?

ーー蛇口…?
松本:
小さい子からお年寄りまで、蛇口を捻れば水が出てくることは知っている。でも、よく考えてみると雨をダムに貯めて、浄水をして、公園まで水が通せるシステムが整っているからこそできるんですが、そんなことまでみんな知らない。
仕組みは知らないけど、蛇口を捻れば誰でもが安全で安心な水が出る。
僕は、それを投資の世界で実現したかった。
当時、証券会社は富裕層などの限られた人たちが顧客で、金融業界の人がする金融商品の説明はすごくわかりづらいものだったんです。
僕はこれまでさまざまな環境に身を置いてきたけど、投資をもっとライトに知ってもらいたい、提供していきたいという想いは、当時から変わりません。みんなには、蛇口を捻るように、当たり前のように投資をしてもらいたいんですよ!

お金が減ってもどうでもいい。それを凌駕する投資の魅力
ーーでも、投資ってやっぱりリスクが高そうじゃないですか。松本さんはなぜそんなに投資を広めたいんですか?
松本:
たしかに、投資をすればお金は増えることも減ることもあります。でも、ちょっと減ったところでどうでもいいんです!

ーーどうでもいいの!?
松本:
うん、本質はそこじゃない。国の施策であるNISAやiDeCoは、お金を積み立てて運用してもらい、老後に備えるものですよね。あれは基本的に放っておくもので、感覚としては銀行に預金しているのと変わらないのでここでは置いておきます。
普段、積立投資しているお金や銀行に預けたお金のことなんて、別に考えないでしょ? でも、投資の場合は違います。
投資の本当の醍醐味は、投資先のこと、ひいては世界全体のことを考えることで、自分の価値をどんどん上げていけること。僕はそれをみんなに体験してもらいたいんですよ。
ーー投資で付加価値を広げる…?どういうことなのでしょうか?
松本:
一般的に、私たちが日常的に考えることって生活圏内のことや働いている会社のことなどですよね。でも、たとえばテーマパークの株を持っていたとしたら、株の値段の上下が気になるようになるはず。
すると、ニュースをチェックしたり、テーマパーク好きの友人に話を聞いたりして、テーマパークに対する温度感が高まっていきます。本来生活していたら耳にしないような情報が、投資をすることによって勝手に入ってくるようになるんです。
株の場合は、株主優待があるので実際に出かける機会も増えるかもしれない。

松本:
同様に、さまざまなものに投資をすることで、いろんな人・もの・場所と繋がり、自分ごと化できるものが増えていきます。すると、世界が立体的に見えるようになり、その人の人生の幅や価値がどんどん広がっていく。
これが、投資の本当の魅力なんです!
ーーなるほど。投資をすることで、世界が自分ごと化していくのか!
松本:
そうそう。いろんなところに投資していたら、目に入るありとあらゆるニュースが自分に関係のあることになるでしょ?
すると、ニュースを見るのが楽しくなるし、いろんな本を手に取るようになると思うよ。そうやって得た情報は永遠に失われず、自分の資産になります。
仮に投資でお金が少し減ってしまったとしても、投資を経て得た価値体験はそのまま残ります。でも、投資を金銭の損得だけで捉えるとリスクだと感じる人が多いんじゃないかな。
ーーそうですね。やっぱりお金が減るのは嫌なので…。
松本:
わかりますよ。基本的に、私たちはリスクを取りたがらないですから。
でも、自分ではリスクを取らないでいい状態をキープしているつもりだったとしても、目まぐるしく変わる世の中では、何もしないことがリスクでもあるんです。

松本:
今は、誰もがインターネットを使えるので情報格差は限りなく少なくなりました。そのなかでできることがあれば、普通に生きていたら得られないような情報を取りに行くこと。
お金は単なる道具で、持っていてもその人の価値が上がるわけじゃないんです。どちらかというと、人生のなかで何を考えたか、どう生きたかが、その人の価値を高めていく。
だから、投資を通じて自分の世界を広げることは、今の時代を生きるうえで、すごく大事なことだと思いますね!
コンビニで“たむろ”してる若者に投資を勧めた。そのワケは?
ーーとはいえ、投資をやるのはもっと先でいいような。お金をかけたいところが他にあるんですよね。
松本:
も、もったいない!
投資ってやっぱり、40代や50代など、「ちょっとお金が不安だな」と思ってからじゃないと始めないものなんだけど、そうすると40代や50代で「投資初心者」になるわけですよね。

でも、20代からやっておけば、40代や50代になったときに、すでに投資体験を経てその人自身の価値が高まっている。すると、しっかり審美眼が身についていて、そのときの自分に合った投資ができると思うんですよね。あぁもったいない!
ーーたしかに40代や50代で初心者っていうのはちょっと不安かも…。
松本:
あと、豊かな暮らしを送りたいのなら、なおさら早めに投資するべきだと思いますね。
僕の考える「豊かさ」は、「毎日その人なりに穏やかに生きている」こと。そのために必要なのは、やっぱりお金よりも情報なんですよね。自分の考えや世界を広げておけば、一時的にお金がなくたって「いざとなったらどうとでもなる」と思えるようになります。
自分の考えの範囲というのは、今まで自分が生きてきた範疇からしか生まれないから、投資を通じて知らない世界の情報を得てほしい。若いうちに広い世界を知ると、選択肢が増えて人生が変わっていくと思いますよ。

あとはちょっと個人的な話なんだけど…。世の中の人が変われば、国が変わり、世界が変わっていくじゃないですか。僕は投資体験を広めることで、それを実現したいと考えています。
ーー(スケールがレベチだった)そんな松本さんが今後やっていきたいことはありますか?
松本さん:
とにかく1回目の体験を良くすること!
たとえば、キャンプって、「行きたいな」と思っても簡単に行けるものじゃないので、誰かに誘われて初めて行くと思うんですよ。でも、1回目に雨が降ったり、キャンプ場が微妙だったりと、体験が悪いともう二度と行きたくなくなりません?
ーー「キャンプ=微妙」という印象がつきますね。
松本さん:
投資でも、儲かることだけが投資体験だと思うと、損したときに離脱してしまう。だから、その1回の体験をよくするために、システムを考えたり、前提として投資の本質的な価値を伝えていくことが大切だと思っています。
僕はねぇ、昔コンビニで“たむろ”していた若者に「投資やろうよ〜」と声をかけていたことがあるんですよ。

最初はウザがられるんですけど、「お金儲けじゃない投資の話だ」と言うとすごく食いついてきて。そうやってしっかり話すと伝わるんだけど、あまり知らない人からしてみると、「勉強しなくちゃいけない」「騙されるんじゃないか?」と思われてしまうんですね。
それを排除して、「投資なんて日常。やらないほうが変」という世の中にしていきたい。これを読んでいる人が、少しでも投資に興味を持ってくれたら嬉しいですね。自分の世界を広げるって楽しいですよ!
・・・
さまざまなものに投資をすることで、いろんな人・もの・場所と繋がり、自分ごと化できるものが増えていく。「投資を通じて豊かになる」というのは単に資産を増やすことで豊かになるのではなく、出会いや経験を増やし、世界を見る目が変わることで豊かになるという意味合いだったんですね…!
何となく難しそうだと思われがちな「投資」。でも、若いときにやるからこそ意味がある。まずは少額から、投資を通じて自分の世界を広げてみませんか?
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